気分転換が思わぬ展開
その心の拠り所とは不倫である。
二十歳以上も年上の男性とのお付き合いであり、勿論男性には妻子がいる。
彼女は一人暮らしであり、今まで殆どが自炊で過ごしていた。時には友人と出かける事もあったが自宅でゆっくり過ごすほうが好きな女性である。
しかし、あの出来事があってからは自宅に一人でいると滅入ってしまう自分がいる。
気分転換もかねて一人で居酒屋へでも行って見ようと思った。
以前友人と何度も行った事のある店だ。
普通なら誰かを誘うのだが一人でくつろぎたい!という衝動に駆られているのも例の一件がそうさせていると思う。
カウンターで一人でいる三十路近くの女も様になると思う自分が何だか滑稽に思えて来た。
いきおい、お店のドアーを開けると数人の客がすでに笑いながらくつろいでいる。
そこで彼女がスーと入ると何人かの男性客が振り向いた。
それだけ彼女は見栄えのする一面を持っている。
どちらかといえば着飾ると派手な雰囲気を醸し出す事の出来る女性だ。
振り向いた客は彼女に連れがない事にきっと心の中で変だなと思ったかも知れない。
「店員の「何名様ですか?」
との問いに彼女が人差し指と小声で一人と告げたのもちょっとめずらしい光景であったようだ。
そこでかれと知り合う事になる。
彼は建設会社の経営者である。最初は何故か彼女から声を掛けたような気がする。
カウンターの右隣に座っていた彼がチラチラと彼女を見るので「何かめずらしい事でもあるの?」と言ってしまった。
男から見れば訳あり一目瞭然である。適齢期の女が一人でいるのだ。
男からすれば気になるのが当然だし話相手になってくれれば、一時でも仕事とのストレス解消には一役買いそうだ。
彼女は以前だったら見ず知らずの男性に、この様な言葉使いで気軽に声を掛けるなんて夢にも思わなかった。
だが、彼女にしてみればなんか寂しかったのである。なにしろ、例の出来事で何か吹っ切れた自分に気付いていた。
彼は言った。
「めずらしいも何も女の子が一人でこんな処にいるのではさみしくないか?」
「さみしい?そんなやさしい態度の裏に本心が隠れているんでしょう!」彼女にしては大胆な発言である。
裏切った男の顔が脳裏をよぎったのは言うまでもない。